ウィリアム・カット 


January 31,1983


ウィリアム・カットの写真これは、僕が生まれて初めて手にしたサイン入りポートレイトである。ウィリアム・カットのことを、当時僕はTVシリーズの『アメリカン・ヒーロー』で見ていた。『スーパーマン』もどきのコメディで、彼は高校教師の役──彼の受け持つクラスの悪ガキのリーダーが、あの『ストリート・オブ・ファイヤー』のマイケル・パレだった!──で、いざ危機が迫った時には、変なマントを身にまとい、スーパーマン(もどき)に変身しちゃうのだ。馬鹿馬鹿しいといえばまあその通りなのだが、けっこう楽しんでみていたように記憶している(それにしても、どうして日本ではこのようなお気楽極楽ドラマが当時も今もないのだろう? 国民性の違いなのだろうか)。

そして、ちゃんとした映画で彼を見たのは、(テレビだったけれど)『ビッグ・ウェンズデー』(1978)が最初だったと思う。これは素晴らしい映画でしたよね。ウィリアム・カットよりもジャン=マイケル・ヴィンセントが主役なのだけれど。サーフィンをする若者たちの青春、と言ってしまえば大抵は下らない映画を想像してしまうものだけれど、この映画はそうじゃなかった。“ビッグ・ウェンズデー”と呼ばれる、水曜日にやってくるという伝説の大波を待ち続ける若者の青春の輝き、あるいは翳りを実に良く描いていた。やがてベトナム戦争がきて、時代は変わり、彼らの心も移ろい、大人になり、そしてついに“ビッグ・ウェンズデー”がやってきた時、彼らは……。う〜ん、書いているうちにまた見たくなってきた。まだ見ていない人は、ぜひヴィデオを借りてみて下さい。必見の映画です。

ところで、最初に書いたように、これは僕が初めて手にしたポートレートなのだけれど、僕ももちろん他の多くの人たちと同じように、外国の映画俳優に英語でファン・レターを出して返事をもらおうなどと大それたことは考えてはいなかった。僕がせっせとファン・レターを書き、このような(といっても大したものじゃないけれど)コレクションを収集するのに至ったのは、ある女の子のおかげである。仮にMさんとしておこう。

Mさんとは「スクリーン」の〈読者の広場〉、もっと正確に言えば〈伝言板〉で知り合った。彼女の持っていた、ファラー・フォーセットの写真と僕の持っていた『Mr.Boo』のパンフレットを交換したのがきっかけだった。彼女は僕より2歳年上の高校3年生の女の子だった。何度か手紙のやり取りをしているうちに、彼女が頻繁に映画俳優にファン・レターを書いていること、そして、かなりの数のサイン入りポートレイトを所有していることを知った。彼女の手紙による丁寧な指導──というほどのものでもないけれど、実際、かなり詳しいところまで教えてもらった──によって、僕は上のポートレイトを手にすることができたわけだ。

Mさんは隣りの街に住んでいて、僕は1度だけ彼女と一緒に映画を観に行ったことがあった。その映画とは、シルヴェスター・スタローンの『ランボー』とアガサ・クリスティの『地中海殺人事件の2本立てだった。映画が始まる前、映画館の暗がりの中で彼女が所有するサイン入りポートレイトを見せてもらった。50枚ほどもあっただろうか、その量にも驚かされたのだが、スターの顔ぶれにも感嘆した。僕が今このサイトで紹介しているものは──マーリー・マトリンなどごく一部を除き──だいたい持っていたし、ジャッキー・チェンやエリザベス・モンゴメリー、おまけにあのナスターシャ・キンスキーまであった。スタローンには悪いが、映画よりもポートレイトを見ていた方が面白かったくらいだ。

結局彼女と会ったのはそれ1度きりだったが、手紙のやり取りはその後も続いていた。彼女は就職し、僕は1浪して大学に進学した。大学に在学中も手紙のやり取りは絶やさなかった。彼女は会社の休みに外国に出かけたりもして、旅行先から絵葉書を送ってくれた。毎年年賀状も送ってくれた。「いい映画観てますか?」といつも書かれていた。

彼女の死を知らせる葉書が届いたのは、僕が大学を卒業して高校の教師をしていた頃のことであった。学生の頃住んでいた住所から転送されてきた葉書は彼女の両親からのもので、そこには彼女が28歳で亡くなったということが書かれていた。生前彼女は心臓が弱かったので、そのせいなのかもしれないが、もちろん死因までは書かれていなかった。でも、死因なんてどうでもいい。彼女はもうこの世にはいない。それだけが事実で、そして現実だ。人は誰でもいつか死ぬんだ。そう思った。もう7年も前のことだ。哀しいことに、僕はもう彼女の面差しさえも思い出すことができない。

そういうわけで、このHPは彼女がいなければ存在し得なかった。よって、詰まらないものかもしれないが、できるならばこのHPはMさんに捧げたい。いささか感傷的ではあるが、僕としてはジム・モリソンの次のような言葉を引用して、結びとしたい。Mさんのご冥福を心からお祈りいたします。


俺たちは生き、そして死ぬ
だが、死は終わりじゃないんだ





「Autographed Photograph」に戻る   「シルヴェスター・スタローン」に進む