マーリー・マトリン 

December 31,1987

マーリー・マトリンの写真 『愛は静けさの中に』(1986)で、ウィリアム・ハートと恋に落ちる聾唖学校の生徒──彼女は実際に聾唖者だそうだ──を演じ、見事第59回のアカデミー主演女優賞に輝いた。私生活でも恋愛関係となった二人だが、すぐに破局したようだ。マーリー・マトリンがアカデミー賞に初ノミネート初受賞したことへの、ウィリアム・ハートの嫉妬・羨みなどが原因らしい。しょうもない男だなあ。

映画じたいは、タイトルの示すとおりとても静かで──もちろんウィリアム・ハートの同時通訳式会話の騒々しさを除けば、ということだが──非常に稀有な、美しい愛の形を女性監督ならではの繊細なタッチで描いていたように記憶している。頑なに口(=)を閉ざすマーリーが、とちゅう、1度だけ感情を爆発させるシーンがあって、それはまさに《心の叫び》ともいうべきもので、そのシーンがとても印象に残っている。作品中、彼女が声を発するのはこの1度だけだったのだが、そのシーンだけでもじゅうぶんアカデミー賞に値するのではないかと思われる熱演であった。まだこの映画を見たことのない人は、ぜひ1度ヴィデオを借りて見てみて下さい。僕じしん、このページを書くために10年ぶりくらいにこの映画を借りて見たけれど、昔見た時よりもかえって今回の方が感動したくらいです。ラヴ・ロマンスが好きな人なら、たぶん後悔はしないことでしょう。

僕は今までに数限りなく映画を観、と同時にそれこそまさに星の数ほどの美しい女優を記憶に留めているのだが、その中でも特に忘れられない──その美しさゆえに、ということだが──女優が3人だけいる。1人は『ブレード・ランナー』(1982)や『追いつめられて』(1987)の頃のショーン・ヤング、そして『天使の涙』(1995)のミシェル・リー、残るはもちろんマーリー・マトリンである。映画の中の彼女は、上の写真なんかよりも、ずっとずっと美しく、そしてチャーミングだった。写真よりも実物の方が綺麗なのは、当たり前のことかもしれないけれど。しかし、実生活では時々逆のパターンもありますよね。ありますというか、我々一般庶民にはそういうケースの方が多いような気もする(笑)。

とにかく、僕は一目で彼女のことが好きになり、すぐに映画の感想をしたためたファン・レターを送った次第だが、よもやアカデミー賞女優から返事が来ようとは思っていなかったので、このポートレイトが届いた時は、まさに狂喜乱舞した。特に、ポートレイトの、“To Hideo love”というくだりを見た時には、「そうか、彼女は僕のことを愛しているんだなあ」などと馬鹿なことを考えて遠い目をし、鼻の下を伸ばしたものだ。今にして思えばまったく恥ずかしい限りである。が、いずれにせよこの写真は今でも僕の宝物である

ただ、持って生まれたハンディキャップのせいで、役柄が相当限定されてしまうためであろうか、その後の映画出演がほとんど皆無なのが惜しまれる。『ウォーカー』(1987)という作品でエド・ハリスと共演したことまでは知っているのだが……。どなたか彼女の近況を知っている方がいましたら、是非教えて下さい。



さて、彼女の近況ですが、「全洋画ONLINE」──リンク・ページにバナーがありますのでどうぞご利用下さい。会員登録が必要ですが(無料)、洋画と俳優に関してならば大抵のことは調べられます──で調べてみたところ、『ウォーカー』以降にも出演作がありました。まずは、『グラン・マスクの男』(1991)で、ジャン・レノと共演。この映画では、マーリー・マトリンは聾唖者の役ではなく、吹き替えでちゃんとセリフを喋る役(!)をやっているそうです。ヴィデオを借りて見たという友人のワタナベ氏(「徒然草・映画篇」第一段を参照)によれば、映画じたいは「まあまあ」とのこと。いつか借りて見てみたい気もしますね。そうか、吹き替えという手があったんですね。

その後も数は少ないながら、映画には出演しているようです。90年代に入ってからは、『ニューヨーク恋泥棒』(1991)で、ロザンナ・アークエットやデイヴィット・ボウイと共演。さらにこの映画には、あのエスター・バリント(!)──名前だけで分かる人はたぶんいないでしょうが、ジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1985)に出ていた女の子です。東欧系の顔立ちとちょっと奇妙なキャラクターが、僕好みだった──も出ているんですねえ。

その後も3本ほど出ているみたいですが、どれもタイトルに聞き憶えのないような作品。でもまあ今でも映画に出演しているというだけで、僕としてはとても嬉しいんですけど。ちょうど、昔別れてしまった音信不通の恋人が、今も元気でやっていると、風の便りに聞いた時のような、そんな感じです。あまり適切なたとえではないかもしれませんけど。




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